鎌倉市:渋滞解消に国内初の通行料検討 東京五輪前に
毎日新聞 2014/4/5

 慢性的な交通渋滞に悩む神奈川県鎌倉市が、東京五輪開催で外国人観光客の増加が予想される2020年を目標に、旧鎌倉地域に流入する車から通行料を取る「ロードプライシング」の導入を検討している。実現すれば国内初の事業だが、代替交通手段をどうするか、商業者や観光業者の合意が得られるかなど、課題は多い。【松永東久】

 海と山に囲まれ、鶴岡八幡宮や鎌倉大仏など数多くの名所旧跡が集まる旧鎌倉地域には、年間約2000万人の観光客が訪れる。

 悩みの種は、休日の交通渋滞。市の調査によると、地域内の休日の交通量は1日当たり約7.5万台で、このうち観光客を含む外からの流入車両は約3万台、通過車両は約1.7万台だった。

 市は1995年に市長の私的諮問機関「鎌倉地域交通計画研究会」を発足させ、交通渋滞の解消に取り組んできた。01年には、市周辺部に駐車してバスなどに乗り換えて観光してもらう「パークアンドライド」や、バスや電車を自由に乗り降りできる「環境手形」を導入した。だが、いずれも根本的な解決にはつながらなかった。

 そこで注目したのがロードプライシングだった。シンガポールやロンドンでは20〜25%交通量が減少したという例もあり、市は12年に正式な諮問機関として設置された「交通計画検討委員会」で13年10月から、導入に向けた議論を始めた。

 市の試算によると、各道路の平均走行速度を時速20キロ以上にするためには、交通量を約34%削減する必要がある。休日の1日当たりの交通量でみると、地域外からの車両と通過車両の計4.7万台のうちおよそ半数の2.5万台を減らす計算になる。課金により2.5万台のうち半数近くが車を使わなくなると仮定。徴収額を仮に1台当たり1000円とすれば、年間で最大で19億円の収入が見込めるという。一部を商品券にして観光客に還元することなども考えられる。

 旧鎌倉地域は三方を山で囲まれ、「鎌倉七口」と呼ばれる7本の切り通しに象徴されるように、外から流入できる道路は非常に限られている。この「守りやすく攻めにくい地形」を利用すれば、課金ゲートは9カ所程度で済むという。

 道路法は一般道路を「無料」と定めているが、料金徴収は禁止していない。自治体による課金には前例がないが、交通の確保・向上は地方自治体の責務であることから、市は「法定外目的税として認められるのではないか」とみる。

 ただ、他の道路を迂回(うかい)する「徴収逃れ」をどう防ぐか、近隣市との調整をどう図るかなど、課題は多い。江ノ島電鉄などの公共交通機関も休日は満員状態で、代替交通手段の確保も難しい。

 最も重要な合意形成も、難航が予想される。検討委では、住民から「老後は静かな環境で過ごしたい」と導入に前向きな意見が上がる一方、商業関係者の中には「車での来店客が減ると困る」との声も多かった。

 それでも市は、東京五輪開催時までに「渋滞のない旧鎌倉地域」を実現したい考えで、松尾崇市長は「実現性は決して低くない。一つ一つの課題をクリアしながら、まずは社会実験から始めたい」としている。

http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/business/20140405k0000e020215000c.html

一箇所でこういうの始めると、日本各地で実施するところが増えそうな気もするけど