2013.12.4 03:05 [産経抄]
明日はプロレスラーの力道山が亡くなってから50年、あさっては田中角栄元首相の没後20年と、昭和を彩った男たちの命日が続く。御両人ともたたきあげの実力派という共通項があり、いまだに根強い人気がある。
▼朝鮮と因縁が深いのも共通している。土建会社を営んでいた若き日の角栄は戦時中、朝鮮半島の事業で財をなし、力道山は現在の北朝鮮で生まれ育った。平壌では、今も土産物屋で記念切手のみならず力道山のラベル入り酒まで売っている。
▼テレビ黎明(れいめい)期、演出だったとはいえ空手チョップで外国人レスラーをなぎ倒す姿は、日本人のみならず朝鮮半島の人々をも熱狂させた。ただし、養子縁組で日本の戸籍をとった彼は生前、「日本人」であることにこだわり、「朝鮮半島出身」と書いた新聞に激怒したという。
▼そんな力道山にブラジルでスカウトされたのが、アントニオ猪木参院議員である。彼は何を思ったのか先月、国会の許可をとらずに訪朝し、銃殺された張成沢前国防委員会副委員長と面会した最後の日本人となった。
▼「プロレスルート」とでもいうべき日朝間の細いパイプは、完全に絶たれたといっていい。「犬にも劣る人間のクズ」と断罪された張氏との親密さを誇示した以上、現政権下で再びかの地を踏める見込みはほとんどなくなった。
▼「改革派」を頼りに北朝鮮で一もうけしよう、としていた人々も顔面蒼白(そうはく)だろう。若すぎる独裁者は、明らかに常軌を逸している。3日後に金正日総書記の三回忌が迫っている平壌では、何が起きても不思議ではない。首相官邸前で、国家転覆罪で銃殺される心配もなく、のんびりと「反原発」「反秘密保護法」と叫んでデモができるこの国は、本当に平和で素晴らしい。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131214/plc13121403040001-n1.htm
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